速習 讃岐弁(高松編)


Section 2 基本編

さて、入門編に続き、語尾などのバリエーションを学びましょう。
しっかりついてきてくださいね。

◆ 語尾の基本


① 軽い疑問を表すのには「な」を使います。
  • そうなの -> そう[なん]な
  • いいね -> [え]ん[な] (同意の確認を表す時は「ええ[な]」)
  • ほんとなの -> ほんま[な]
  • 済んだの -> 済ん[だ]ん[な]
似た表現に「かえ」があります。 「な」よりもやや疑問が強く、ちょっと不安を感じた時などに使います。
  • そうかな -> そう[か][え]
  • いいのかな -> え[ん]か[え]
  • ほんとかな -> ほん[ま]か[え]
  • 済んだのかな -> 済ん[だ]んか[え]
「かいの」「かいな」を使うとちょっとあきれた感じになります。
  • 何を言ってるんだ -> なん[よ]んかいの
  • あほじゃないのか -> あ[ほ]かいな
② 推測・同意を求めるなどの「〜だろう・〜でしょう」は「やろ」です。
  • あるだろう -> ある[や]ろ
  • そうでしょ? -> [そ]や[ろ]?
  • いいでしょ? -> え[や]ろ?
「そう」の「う」がぬけて短くなるところがポイントです。

③ 否定を表す「ない」は「ん」に、「〜じゃない」は「〜ちゃう」になります。
  • 行かない -> 行[か]ん
  • 知らない -> 知[ら]ん
  • そうじゃないよ -> そう[ちゃ]うって
  • いいんじゃない -> えん[ちゃん]
  • 違うんじゃない -> [ちゃ]うん[ちゃ]ん
高校の古文の時間に、否定の「ない」は古語では「ぬ」です、 と習った時から不思議だったのですが、 なぜわざわざ一文字から二文字へ変化したのでしょうか? 讃岐弁のように「ぬ」が「ん」になるのが自然な気がするのですが。 言いやすいものが共通語になるわけではないのですね。

④ 勧誘をあらわす「〜しようよ」は「〜しようで」になります。
また、「〜したらどう?」という提案を表す時に「〜したらわ?」といいます。
  • 行こうよ -> い[こ]うで
  • 寝ようよ -> ね[よ]うで
  • 見たらどう? -> 見[た]ら[わ]?
  • 買ったらどう? -> [こう]たら[わ]?
⑤ 命令を表すときは「まい」・「で」が使えます。
  • 宿題しなさい -> 宿題し[ま]い
  • じっとしてなさい -> じっ[と][しとり]まい
  • 宿題するのよ -> 宿題[す]るん[で]
  • 悪いことしないのよ -> わ[るい]こと[せん]の[で]
「宿題しまいよ」と「宿題するんで」の差は(共通語でもわかるでしょうが)、 前者は命令、後者は命令というより念をおすという感じです。
また、動詞を途中で止めると、それで軽い命令になります。
  • はやくしな -> はよ[し]
  • 走りな -> は[しり]
  • ひとりで行きな -> ひ[と]りでい[き]
「はやくしな」は「はやくしなさい」の略なのでしょうが、 讃岐弁ではさらに「な」を抜いてしまった形になります。
⑥ 感嘆を表す「やー」
  • 恥ずかしい! -> は[ずかっしゃー]
  • おそろしい! -> お[とろっしゃー]
  • ああ、疲れた! -> え[らやー]
  • うう、寒い! -> さ[むやー]
「や」が直前の語尾「しい」とくっついて「しゃー」になるのがポイントです。
「はずかしゃー」は自分が恥ずかしい時にも使いますが、人が恥ずかしいことをした時に からかって言うことも多いです。
「うらめしや〜」を讃岐弁で言うと「うらめっしゃー」になるのでしょうか。 さっぱりしすぎてこわくないですね。

⑦ 強調の「が」
  • なんでもいいじゃないか -> なん[で]もええ[が]
  • 大きすぎるよ -> おっきょす[ぎ]るが
  • 疲れたよ -> え[ら]いが
「が」を付けると怒ったりちょっといらいらしているように聞こえます。
友人の長い買い物に付き合わされていいかげん嫌になってる時とか、 もうくたくたで気力がない時などにはぴったり。

◆ 接続語


① 理由を表す「とて」 これは方言なのかどうかわかりませんが、最近の共通語ではあまり使われていない気が するのでとりあげました。古語が残っているという一例だと思います。
  • 筍をとるために山へ行った -> 筍とるとて山へ行った
  • 宿題するために起きていた -> 宿題[す]るとて起き[とっ]た

② 非難するときに使える「からに」
  • いたずらばかりして -> いたずらばっ[か]りし[てからに]
  • 寝てばかりいて -> 寝[て]ばっ[か]りおってからに
よくこんな風に小言を言われました....。

③ 限定や強調の「や」「やこし」
  • 5時になんか起きるわけがない -> 5時にや起きるわけない
  • ごみなんか拾わないの -> ごみや拾わんの
  • そんなことなんか知らないよ -> そんなんやこし知らんわ
  • おまえなんか目立ちたいだけだろう -> 自分やこし目立ちたいだけやろ

◆ 過去形


讃岐弁では過去形を表すのに「〜なんだ」を使います。
  • しなかった -> [せ]なんだ
  • 行かなかった -> 行[か]なんだ
  • 遊ばなかった -> 遊ば[な]んだ
  • 知らなかった -> [知ら]なんだ
でも、これは最近はあまり言わないのかもしれません。
「せなんだ」のかわりに「せんかった」って言う気がします。

◆ 進行形


讃岐弁では進行形を表すのに「〜よる」を使います。
動詞の終止形の最後の音によって「よる」の直前の形が変化します。
    終止形    共通語進行形    讃岐弁進行形
    する      している        し[よ]る
    言う      言っている      [よう]る (「言いよる」が縮まったのだろう)
    書く      書いている      書っ[きょ]る
    指す      指している      指っ[しょ]る
    立つ      立っている      立っ[ちょ]る
    死ぬ      死んでいる      [死ん]にょる
    盗む      盗んでいる      [盗ん]みょる
ちなみに「しよる」「ようる」は疑問形になるともっと短縮されます。
‘何やってんの’は「なん[しょん]な」に、‘何言ってんの’は「なん[よん]な」 になります。

◆ 状態表現


共通語では進行形も状態も「〜ている」で表しますが、 讃岐弁では状態を表す時には「〜よる」でなく、「〜とる」を使い、 厳密に区別することができます。 先ほどの進行形の例と対比させてみるとよく分かります。
    終止形    共通語進行形    讃岐弁進行形    讃岐弁状態表現
    する      している        しよる          し[と]る
    言う      言っている      ようる          [言う]とる
    書く      書いている      書っきょる      書い[と]る
    指す      指している      指っしょる      指し[と]る
    立つ      立っている      立っちょる      立っ[と]る
    死ぬ      死んでいる      死んにょる      [死ん]どる
    盗む      盗んでいる      盗んみょる      [盗ん]どる

◆ 伝聞・推測


共通語の伝聞を表す「〜のようだ」を、讃岐弁では「〜げな」と言います。
また、形容詞や動詞に「げな」を付けて推測の意を表すこともできます。
  • そうらしいよ -> そう[げ]な[で]
  • 行ったそうだ -> [行ったげ]な
  • 怒ってるようだったよ -> お[こっとるげに]あった[で]
  • 着いているみたいだよ -> 着いとる[げ]な[で]
「きれいな服」は‘きれいな服’ですが、「きれい[げ]な服」というと ‘きれいに見える服’です。実はきれいじゃないのかも。

◆ 指示語

① 「こ・そ・あ・ど」の変化
[こ]い(これ)[そ]い(それ)

こ[なん](こんな) そ[なん](そんな)あ[なん](あんな)ど[なん](どんな)
こ[な]い(こんなに)そ[な]い(そんなに)あ[な]い(あんなに) ど[な]い(どう)
こな[な]ん(こんなもの)そな[な]ん(そんなもの)あな[な]ん(あんなもの)どな[な]ん(どんなもの)
こっちゃ(こっち)そっちゃ(そっち)あっちゃ(あっち)どっちゃ(どっち)

② 5W1Hもどきの一覧
意味--- 例 ---
なん[で]どうして「なんでそなんこと言うん?」
だれっ[ちゃ]だれも「だれっちゃおらんけん、今のうちや」
どこっ[ちゃ]
ど[こ]っちゃ/td>
どこも「どこっちゃ行かんといての」
なん[ちゃ]なんにも「なんちゃのうてごめんの」「なんちゃかんまんよ」
どれっ[ちゃ]どれでも「どれっちゃかわらんよ」
どなん[ちゃ]どうも(しない)「どしたん?」「どなんちゃせん」
どないしてどうやって「どないして登ってきたん?」

Copyright (C) 1998 by Abe Michiko